2012.10.11 Thursday - 09:45

香港で開催中のタイポグラフィカンファレンスATypI 1日目のレポート

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2012年10月10日〜14日まで香港で開催されているタイポグラフィカンファレンスATypIに参加しています。

これまでは欧米の主要都市で開催されていたのですが、2012年は初のアジア開催。そういったこともあり、アジア系の参加者が多く、また日本人の方も登壇されています。

僕自身こうしてフォントに関するブログを書いていますが、文字業界の人間ではなく、普通の人(このブログを読んでいるあろう多くの人)が参加するとどうなるのか、どんな雰囲気なのかということをレポートとして伝えてみたいと思います。

ATypIAssociation Typographique Internationale(国際タイポグラフィ協会)の略称だそうですが、パッと見‘I’の部分が大文字のアイなのか、小文字のエルなのか、もしかしたら数字の1なのか分かりづらく、“アタイプル”なのか“アティピ”なのか読み方もよく分からないかもしれませんが、正式には“エイタイプアイ”と読みます。

そのATypIがどんなイベントで、どうやって参加するのか等の詳細は、今回2日目に登壇されるMonotypeのタイプデザイナー大曲さんの「そうだ、ATypI香港に行こう。」をご覧ください。特にPDFの非公式ガイドは大変ためになりました。ありがとうございます。

1日目(と2日目)は、香港中心部より北にあるINNOCENTREというイベント会場にて、プレゼンとワークショップが併行して開催されています。

途中地下鉄の出口を間違えてしまったり、なぜか観光客に道を聞かれたりして焦りましたが、無事会場に入りました。

レセプションで自分の名前を伝え、参加証オリジナルTシャツとフォントメーカーやファウンダリの資料等を受け取ります。ちなみに中に入っている扇子は、モリサワさんのオリジナルグッズだそうです。

最初のプレゼン・ワークショップまでの時間は軽食や飲み物が用意されています。会場ではモリサワや、Adobe、タイププロジェクトの方々にお会いしました。

さて、下記に参加したプレゼンを簡単にレビューしますが、当然ながら専門的な話で、かつスピーチはすべて英語なので正直よく理解できなかった内容も多々ありますので、予めご了承ください。変なこと書いていたらごめんなさい…。

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最初のプレゼンと次のプレゼンは、ライセンス及びビジネス話。昨今フォントは紙媒体だけでなく、Webフォントや電子書籍、モバイル端末等でも利用されるようになり、技術の進化によりライセンス形態が複雑になりすぎてメーカー側も苦労しているという、前者はAdobeとTypekitの関係者、後者はFontShopの方のお話でした。複雑だけどシンプルにしたいという思いは強いそうです。

ライセンスの話が終わると次は、ソーシャルファンドサイトとして有名なKickstarterでフォントビジネスができるのかどうかというお話でした。ChatypeFolksなど実際にKickstarterで成功している実例があります。スピーカーの方の活発的なジョークで会場を沸かせてました。アメリカのどの州でKickstarterの成功者が多いのかといったデータが興味深かったです。

次は航空会社Air Inuitの企業書体を手がけたJean-Baptiste Levéeさんのプレゼンで、ようやくデザイン寄りの話になりました。イヌイット語はカナダ先住民文字が使われているそうで、それと調和するアルファベットをデザインする際の苦労話を聞けました。完成したAir Inuit Sansはとても素晴らしいですね。機体のデザインもかっこいいです。

そして前半の見所?Nokiaの企業書体Nokia Pureを制作したロンドンのフォントメーカーDalton Maagのお話。
ビジネス的に中国市場はデカいということと、Nokia Pure Chineseの話が中心でしたが、途中から登壇者であるBruno Maagさんの「書体開発というのはものすごく大変なんだ!フリーフォントだけになってしまっては困る!ビジネスとして成り立たない!」といった感じの信念が表立ったお話になりました。(なんとなくある矛先に向かって批判してらっしゃったのかも…?)

次はMonotypeによるWebフォントサービスFonts.comのダイナミックサブセッティングのお話。ページロード時に必要な文字だけのフォントファイルを生成する技術のことです。国内のWebフォントサービスには導入済みで、2バイト言語を使う我々には既に当たり前の話ですが、海外の方向けに分かりやすく解説。自身のダイナミックサブセッティングデモサイトを紹介していました。…にしてもスライドのデザインがものすごくかっこよかったです。

午前中最後はReading expertiseという文字による認識の正確性の話題で、非中国人で非タイポグラファーの方に、例えばVerdana→Bodoniといった感じで違う書体の文字を連続して見せると認識率が一気に下がるというお話でした。ちなみにアルファベットであれば認識率に変化がないそうです。なるほど。

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ここで1日目の前半は終了。ビュッフェ形式のランチが用意されているので自由に食べます。中華料理が中心ですが、なぜか寿司じゃない寿司も置いてありました。

僕はここで離脱し、ショッピングへ出かけました。今回のATypIはどちらかと言えばエンジニア向けのが多いので、関係者以外にとっては難しい話題もあります。なので、聞きたい話だけしっかり聞ければよいかなというスタンスです。あと観光もしたいので!

まとめると、単に文字が好き!という理由で行っても全然問題がないと感じました。ATypIはもっとキビキビしたイベントかと思っていたのですが、いい意味で割とゆるい雰囲気でした。会場をホテルに移す3日目からは雰囲気が変わるかもしれません。

→2日目に続く

ATypI Hong Kong 2012
http://www.atypi.org/hong-kong-2012

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