2012.10.12 Friday - 09:43

香港で開催中のタイポグラフィカンファレンスATypI 2日目のレポート

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香港で開催中のタイポグラフィカンファレンスATypI1日目のレポートに続き、日本人の登壇者が多い2日目のレポートです。

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まずは、藤原定家の書風にインスパイアされたという、Adobeの筆文字書体かづらき (Kazuraki) のタイプデザイナーの西塚さんと山本さんのお二人。終始和やかな雰囲気で進行していました。かづらきは、デザインはもちろんのことエンジニアの面においても、世界的に話題を呼んでいるフォントです。

その流れで、かづらきのエンジニア担当であるKen Lundeさんがフォントの技術的な面を詳しく解説が続きます(プレゼン資料はこちら)。かづらきフォントは、複数の合字(リガチャ)を含んでおり、実際にInDesignを使って合字の切り替えを行うデモも紹介されました。

続いて任天堂やアップルなどの大手企業が採用する人気の日本語書体、AXISフォントを開発するType Project(タイププロジェクト)によるプレゼン。発表された内容は大きく分けて、AXISフォントとAXIS明朝体、そして目玉のアジャスタブル・フォント (Adjustable Font) の3項目。

アジャスタブル・フォントは書体のデザインをしっかり維持したままコントラストや字幅、太さを動的に調整できるフォントで、実際にデモを見て非常に驚きました。動的に変更しているからといって、ある部分が変に太くなったり、重なってしまったりしない点がすごい!フォントのあり方が変わる革新的な技術だと感じました。デモを含め詳細は年末めどに一般公開予定のこと。また参加者にはType Projectのオジジナルノベルティがプレゼントされました。

続いてソーシャルファンドサイトPledgieにて投資者を募集していたTrueTypeフォントのヒンティングに関するプロジェクトttfautofontの方々。かなりエンジニアリングな話でしたが、WebフォントサービスWebINKからの大規模な投資金があり、Webフォントの表示に関して大きな期待できそうです。

次はMonotypeでタイプデザイナーとして活躍される大曲さんによる、非ラテン文字のWebフォント事情について。非ラテン文字とある通り、中国語、日本語、韓国語(それぞれの頭文字をとってCJKというそうですよ。)だけではなく、他の言語の動向についても紹介されていました。

スライドの日本語例文が「お魚くわえたドラ猫…」だったり、北朝鮮の公式サイト(http://www.korea−dpr.com/)にもGoogle Web Fontsが使われているなどのジョークを交えた楽しいお話でした。

引き続きMonotypeのBill Davisさんによる非ラテン文字のWebフォント考察。欧米諸国ではWebフォントがアーリーアダプター〜アーリーマジョリティ層に浸透しているのにも関わらず、非ラテン文字圏はまだイノベーター層のみという現状。

日本国内のWebフォントサービスが紹介されたほか、中国のWebフォントサービスjustFontがあることを初めて知りました。スライドの締めに“This is the year non-latin web fonts takes off!”の一文が。果たして元年になったのでしょうか。

その後、GoogleがWebフォント表示の高速化を実現するHTML5のFilessystemを使ったJavascriptライブラリgwynを紹介したほか、フォント制作ソフトメーカーであるFontLabTransType 4FontLab Studio 5.2を本日発表したこと、新しいフォント作成ソフトGlyphsについてや、カワバタさんとカミチさんによるGlyphWiki花園明朝のプレゼンがありました。

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2日目は後半も含めてテクニカルなエンジニア向けセッションが多く、残念ながらデザイナー職の僕には難しくてほとんど理解できなかったですのですが、フォントはデザインだけでなく裏方のエンジニア部分において、ものすごい苦労があることを改めて知りました。

またフォントの制作に関しても、FontgrapherやFontLabのようなものだけでなく、より感覚的に制作できる進化したソフトが色々と出ているようです。

その後会場を香港理工大学に移し、浅葉克己さんの基調講演やレセプションパーティが催されました…が、僕は体調不良で不参加。3日目は大丈夫だろうか。

→3・4日目に続く

ATypI Hong Kong 2012
http://www.atypi.org/hong-kong-2012

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