2014.10.20 Monday - 20:03
世界中のあらゆる文字や記号を一望できる本「世界の文字と記号の大図鑑 ー Unicode 6.0の全グリフ」がすごい
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世界中のあらゆる文字や記号を一望できるという「世界の文字と記号の大図鑑」。
実はこの本、発売前から何やらすごい文字本が出る…という噂で話題となっていました。
ドイツで出版されたdecodeunicodeが原書であり、日本版の監修は、人気タイポグラフィ書籍であるタイポグラフィ・ハンドブックの小泉 均さんが担当されています。
Photo by Shinya Hirose(廣瀬真也)
decodeunicodeの日本版が世にでるまで
今回監修者の小泉さんに簡単ながら取材をさせていただきました(本レビュー記事についても監修いただいています)。
まず、とにかく版権の交渉やコスト面が大変だったとのこと—様々な困難を乗り越えてようやく出版することができたそうです。
ドイツの原書の方は、特に漢字であるCJK (Chinese, Japanese, Koreanの頭文字をとってCJKと言う) の編集処理が全体的に甘かったため、とにかく改善をしたかったとのこと。
また本書は単純に翻訳しただけの本ではなく、日本語向けに独自の編集がなされています。
例えば原書の漢字には、中国の字形である細明朝体とゴシック体(サンセリフ体)が使われていましたが、日本版では日本で使われている漢字においては、平成の大改刻を行った大日本印刷の「秀英明朝ボールド」が使われています。
日本人にとって親しみやすいだけでなく、ゴシック体よりも明朝体のほうが、文字の差異が認識しやすいためです。また秀英明朝の“ボールド(太字)”が使われているため、日本で使われている漢字かどうかがすぐに分かりますね。
ゴシック体(サンセリフ体)だと、叱 (U+53F1) と𠮟 (U+20B9F) の区別が付きにくい。
Unicode=ユニコードとは?
本書の副題にある「Unicode 6.0の全グリフ」のUnicode=ユニコードとは一体何でしょうか。
ユニコードとは文字コードの業界規格です。年々アップデートされており、本書は2010年に発表された6.0に準拠しています。
このユニコードによって、我々が普段使う全ての文字には固有のナンバリングがされ、そのコードによってコンピュータ上では文字が認識されています。
例えばアルファベットの“A”には“U+0041”が振り分けられている。
実は身近な存在であるユニコード
ユニコードと聞くと、どこか専門的で難しいと感じてしまうかもしれません。
実際ユニコードをそこまで意識しなくても、デザイナーであれば仕事ははできますし、もちろん生活にも支障はありません。
しかしながら近年使われているバラエティ豊かな顔文字のパーツ素材となっているものは、ユニコードが基板として存在しているからなのです。
また日本独自の文化であるとも言えるEmoji(絵文字)がユニコードに採択されるなど、実は身近な存在と言えるのかもしれません。
将来は絵文字が入ったURLが存在するかも?
ワールド・フォント、グローバル・フォント
OpenTypeフォントの一般化により、フォントデータに収録できるグリフ数が大幅に増え、1つのフォントデータで多言語対応できるようになりましたが、ユニコードには10万文字以上も定義されているため、1つのフォントでは対応しきれません。
本書では5万以上を収録するArial Unicodeや、フリーフォントのCodeシリーズ、URW++社のNimbusなどが紹介されており、各ページには使われているフォント名が示されています。
ユニコードから文字を直接入力するには?
本書に掲載されている全ての文字にはユニコードが記載されているので、そのコードを入力すれば、実際に文字を打つことができます。
フォントがその文字データを持っていることが前提ですが、使える文字や記号を知れば、デザイン作業に幅が出ることは間違いないでしょう。
OS Xの場合は、デスクトップ右端、日時の左にある日本語入力メニューの「文字ビューアを表示」から直接コードを入力することで、任意の文字を表示することができます。
参考サイト:http://blog.hyec.jp/2013/10/mac-os-x-109-mavericks_26.html
Windowsの場合は、Altキーを押しながらXキーを押すと直接入力することができます。
参考サイト:http://office.microsoft.com/ja-jp/word-help/HP003084929.aspx
誰もがカジュアルに楽しめる文字本
“デジタル・タイポグラファー必携の書”と謳っている通り、文字関係者にとっては言うまでもなく非常に有益な本ではありますが、実は一般の人でもカジュアルに楽しめる本なんです。
収録されているデジタル化された全109,242文字を一度に閲覧できるのは非常に魅力的です。
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百聞は一見にしかずということで、本書の一例を紹介します。
ツに半濁音?…アイヌ語で使われるそうです。
間に入っているカラーページは、著者によるピックアップ文字となっていますが、日本版ではコード表に近いページに差し込まれており、一部日本人向けに原書とは違う文字が選ばれています。
月の左下が欠けている不思議な“月”。
日本の氏名では、微妙に異なる様々な“龍”が使われているようです。
いろいろな“くにがまえ”。日本独自の言い方だそうで、中国では意味が異なるそうです。
お寿司屋さんを彷彿させる“さかなへん”。
将棋やチェス、麻雀にドミノ、トランプなど絵文字 (emoji)もたくさんありますね。
割とリアルな、う○ちの絵文字も!
巻末には言語学者デボラ・アンダーソン博士による、ユニコードに登録されていないマイナー言語のレポートを掲載してます。日本人にも馴染み深いのは、やはりトンパ文字でしょうか。
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発売から少し時間が経ってのレビューとなってしまいましたが、時間をかけて見れば見るほど「こんな文字があったのか!」と常に新しい発見があります。
皆さんもぜひ、面白い文字や記号を発見してみてください。
研究社『世界の文字と記号の大図鑑』―Unicode 6.0の全グリフ
http://webshop.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-37736-6.html
decodeunicode(原書)
http://www.decodeunicode.org/
htype.net(小泉 均さんのサイト)
http://htypo.net/