2012.7.6 Friday - 09:57
タイポグラフィ・ハンドブック — 勘や感性でなく“理屈”で書体を学ぶことができる欧文タイポグラフィの辞書
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欧文組版タイポグラフィ・ハンドブックは、スイス・タイポグラフィを熟知し、大学等で教鞭をとる小泉 均さんによる書籍です。小泉さんはグラフィックデザイナー・タイポグラファーとしてだけでなく、かつて『デザインの現場』にて連載を行なっていた「タイポグラフィの読み方(美術出版社)」の著者、「Helvetica Forever」の監修者としてもご活躍されています。
発売前から本書のFacebookページでプロモーションをされており、発売を楽しみにしていました。ようやくひと通り読み終えましたので簡単にレビューを。
まず驚いたのが本の装丁。想像よりもコンパクトなサイズでした。しかもどこか懐かしい辞書のような感じです。んん?と思って出版社を見てみると、いわゆるクリエイティブ系の出版社さんではなく、辞書を得意とする研究社さんからのリリースでした。
赤い帯に“これまで勘や感性だけで組んでいたものに、「理屈」をプラスする便利な一冊。”…と書かれている通り、何となく覚えてきた・学んできたタイポグラフィの知識を、しっかりと理屈にすることができるというコンセプトになっています。頭から読んでいくというよりは、調べたい部分を都度開くという、辞書のような使い方が似合いますね。
・・・
今回、本レビュー記事を書くにあたり、著者の小泉さんと直接やり取りさせていただきました。その中で、僕の方で特に気になったページのサンプルデータを頂くことができましたので紹介させていただきます。(小泉さん、ありがとうございました!)
冒頭ではUniversやHelveticaなどの代表的な欧文書体の“カーブ”から、書体デザインの違いを考察します。大きいサンプルで1つの文字をじっと見てみてください。どんなところがどんな風に違うのかがよく分かります。
書体の歴史や、その分類(ジャンル)についても具体例を交えながら分かりやすく解説されています。書体の分類については、音楽のジャンルと同じぐらい特別決まったものがあるわけではないそうですが、Vox-ATypIの分類法のほか、FontShopやLinotypeによる独自の分類法も紹介されています。
Centaur、Caslon、Didot、Bodoni、Gothamなど厳選された53書体の組見本が集められています。書体選びには様々な考え方がありますが、“一文字一文字をみて決定するのではなく、組んだ状態の黒みやテクスチャーで決定することが通常である” の一文に納得してしまいました。その理由はこの組見本を見比べてみるとよく分かります。
実際に書体を組む際に参考になるワードスペースやハイフネーション、グリッドシステムなど。サンプルが視覚的で非常に分かりやすいです。
フォントのファミリーといえば必ず挙がるUniversの考察。ウェイト展開において初めてナンバリングが導入された書体です。
書体やタイポグラフィの話題だけでなく、タイポグラフィの重要人物(Typogoers)、フォントファウンダリリスト、専門用語索引のほか、封筒やレターヘッド、カードなどについても取り上げているという充実っぷり。何から何まで網羅されています。
小泉さんとのメールのやり取りの中で、“この本はデザイン書やタイポグラフィ・アート本ではない。” と仰っていました。いいところがぎゅっと凝縮され、かつ日本語で分かりやすく解説されたこれまでになかった本辞書とのことです。学生の皆さんにはもちろん、プロの方にも本棚に並べておきたい一冊です。
また2012年7月20日(金) 19:00–@青山ブックセンター本店(東京・表参道)で、2012年8月2日(木) 19:30–@ジュンク堂書店 池袋本店にてトークイベントが開催されるそうです。
研究社 – タイポグラフィ・ハンドブック
http://webshop.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-37732-8.html
htypo.net (小泉 均さんのサイト)
http://htypo.net/
タイポグラフィ・ハンドブック Facebookページ
http://www.facebook.com/handbookoftypography
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