欧文フォントを買おうとしている人へ6つのアドバイス

info過去に運営していたフォントブログの記事を再編集して公開をしています。

「書体は見た目で選んでいい」「書体選びはデザイナーの仕事である」「欧文書体はHelveticaやDINだけじゃない」などと言われていますが、いざデザイナーが「フォントを購入してみたい」と思っても、蓋を開けてみると面倒なことが多く、億劫になってしまいがち。とは言え、他のデザイナーがどのような判断で、どのようなフォントを購入したのかを知る機会はほとんどないという現状。「書体選び=デザイナーの仕事」であれば、真似されたくないという意味でも、選んだ書体はできるだけ自分だけのものにしておきたいところです。

和文フォントに比べて種類の選択肢が多く、比較的安価で購入できる欧文フォントにスポットを当てて、アドバイスをまとめてみました。

1. デザインのジャンルに固執しない汎用性のあるデザインを選ぶ

初めて購入するのであれば、個性的なデザイン書体で特定の雰囲気を出す場合を除き、どんなデザインにも対応できる飽きのこない、かつ長く使える普遍的な書体を選ぶことをおすすめします。汎用性のあるデザインの書体であれば、途中でデザインの方向性が変わったとしても、書体自体を変更する必要が少なくなります。価値観は人それぞれなので「あ、私この書体のデザイン、好きかも?」という気持ちが大事です。

普遍的で汎用性のあるデザインの書体ならどんなデザインにも対応できる

2. ファミリーやOpenTypeフォント機能が充実しているフォントを選ぶ

複数のウェイト(太さ)があったり、‘a’や‘g’のデザインが2種類あったり、合字(リガチャ)を切り替えられたり、隠し絵文字があったり、OpenTypeのフォント機能が充実しているフォントは単に文字を入力する以外にも楽しみがあります。
プロフェッショナル用のフォントを購入する意味は、まさにここにあると言っても過言ではないでしょう。OpenTypeフォント機能は、制作ソフトの文字パネルで簡単に設定できます。

Klavikaには‘g’のデザインが2種類、Akko Roundedにはst合字がある

3. 書体のデザインはテクスチャで検討

デザインが似ている書体の組み合わせにおいて、どちらにしようか判断に迷うことがあります。小泉 均さんの著書「タイポグラフィ・ハンドブック」に書かれていましたが、ある特定の文字列でどちらが良いか判断するよりも、流し込まれた文章からテクスチャとして判断すれば、デザインが似ている書体でも雰囲気の違いがよく分かります。
最近のオンラインフォントストアは、文字列だけでなく文章で比較することもできるので、様々な文章から書体のデザインを検討してみましょう。

一見似たようなデザインの書体であっても、文章にすると違いが分かるかも

4. 購入?サブスクリプション?どこで入手するかを確認

オンラインフォントストアには大きく分けて3つのタイプがあります。1つはMyFontsのような複数のフォントブランドが集まったデパートタイプ。もう1つは個人の独立系フォントブランドに多い直営店タイプ。最後にAdobe Fontsのような登録されているフォントから自由に選べるサブスクリプションタイプ。

まずはAdobe Fontsなどのサブスク系に目的のフォントが登録されていないか確認をします。
そのうえで購入となった場合、デパートタイプほうが複数のフォントブランドから探せますが、最近個人の独立系フォントブランドは自社ストアのみしか販売しないという傾向がありますので、事前に比較をして調べてみるのが良いでしょう。

また多少の英語力とクレジットカードは必須です。当ブログにはMyFontsの購入・利用方法 日本語ガイドがあるので、英語が苦手な方はぜひ参考にしてください。

目的のフォントがあった場合でも、すべてのウエイト(太さ)や全種類のフォントが利用できるとは限らない

5. ファミリー単位でまとめて購入

あるデータによると、日本人が欧文フォントを購入する際、BoldならBoldだけのように単体のウエイト(太さ)のみを購入する方が多いようですが、ファミリーでまとめて買ったほうが断然おトクです。
細いウェイトを用いればエレガントさを、太いウェイトを用いれば力強さを、同じ書体で表現できます。後から必要になった場合、逆に高くついてしまうので、最初からファミリー単位で購入することをおすすめします。

Process Type FoundryのColfaxでの比較(2023年7月現在)

6. メルマガやSNSでセール情報チェック

以前ほどでは無くなりましたが、オンラインフォントストアはお得なセールを行なう場合があります。
メールマガジンやX (Twitter)、Instagram、FacebookページなどのSNSで、割引クーポンコードが発行されるすることが多いので、気に入ったフォントブランドがあればフォローをしてチェックしておきましょう。

Emtype Foundryはメールマガジン購読でセール情報は届く

最初からインストールされているフォントではなく、自分が選んで購入したフォントは愛着が湧きます。ぜひ自分が選んだフォントを購入してみてください。

初稿:2013.4.4