2012.7.12 Thursday - 09:55
フォントがもっと分かる!欧文フォントの名前に付いているアレの正体とは?
フォントにはフォント名のほかに、MT、Std、OsF、CEなど見慣れない省略文字が付いていますね。その正体とは一体何なのでしょうか?
執筆時点で少し前の記事になりますが、WebフォントサービスWebINKやクリエイティブ系補助ソフトウェアを取り扱うExtensisのブログに一覧としてまとめられていました。便利で分かりやすいので、一体何なのか気になったら是非この一覧どうぞ。
Abbreviations in Font Names Explained!
http://blog.extensis.com/fonts/abbreviations-font-names.php
・・・
…と紹介だけして終わろうと思ったのですが、補足を含めて個人的に気になったものをもう少し詳しく見てみたいと思います。
多くの場合はフォントブランド名、もしくはウェイトやスタイルを示す
有名・定番書体はライセンスの関係上様々なフォントブランドが同じ書体をリリースしているため、それらを区別するために省略文字が付けられています。
割とよく見かけるブランドだと、FF=FontFont、BT=Bitstream、MT=Monotype、ITC=International Typeface Coprporationでしょうか。皆さんのパソコンにインストールされているフォントにも多くあるはずです。最近はあまり見ない気がするのですが、LT=Linotype、A=Adobeなんてのもあります。これらは頭についたり後ろについたりします。
またフォント名そのものに現れることはあまりないのですが、Lt=Light、Bk=Black、Con=Condensedなどウェイトやスタイルを示すものもあります。
フォントを購入する際に重要になる Std / Pro / Com
Std=Standard、Pro=Professionalのほか、Linotypeの一部のフォントに見られるCom=Communication。これらは特にフォントを購入する際、どれを買えばよいのか迷うポイントになりがちです。
結論から言うとそのフォントが収録する文字セットの違いであり、言ってしまえばマイナーなヨーロッパ言語を含むのかどうかの違いであることが多いです。詳しくはこれでもう迷わない! Std / Pro / Com / W1G / Paneuropean / Cyrillicなど欧文フォントの言語のキーワードを徹底解説の記事をご覧ください。
ライノタイプ・モノタイプの日本総代理店のエス・ディ・ジー株式会社によると、Linotype (Monotype系列)では2012年8月1日より、Pro / Com版の存在するものに関してはStd版の取り扱いと、Windows版のTrueType以外のTrueTypeやPostScriptの取り扱いが中止されるそうです。
ライノタイプ・モノタイプ・ITC 一部書体(フォーマット)取扱い終了のお知らせ
http://www.linotype.co.jp/termination_notice.pdf
Linotypeの商品カタログページではStd / Pro / Comを切り替えて対応言語を確認できる
タイプディレクター小林 章さんのAkkoにはStd版とPro版が用意されており、値段も異なる。
各国の言語を示す CE / PE / CY (Cyr) / GR (Grk) / TU (Turk)
チェコ語やポーランド語などのマイナーなヨーロッパ言語であるCE=Central EuropeanやPE=Pan European、ロシア語のキリル文字のCY=Cyrillic、ギリシャ語のGR=Greek、トルコ語のTU=Turkishなどを含んでいるかどうかを示しています。詳しくはこれでもう迷わない! Std / Pro / Com / W1G / Paneuropean / Cyrillicなど欧文フォントの言語のキーワードを徹底解説の記事をご覧ください。
MacOS Xの標準フォントであるHelvetica CYやCharcoal CY
ちなみに日本語のフォントだとStdN、Pr5、Pr5N、Pr6、Pr6Nなど、複雑かつ細分化された規格があります。これらについてMORISAWA PASSPORTに付いてくる小冊子やモリサワのサイト、Adobeのサイトを参照ください。
OpenTypeフォント機能の OsF / LF / SC / Alt
OsF=Oldstyle Figures(オールドスタイル数字)は本文に馴染む高さの揃っていない数字で、デフォルトフォントだとGeorgiaの数字が該当します。一方、一般的な高さの揃っている数字はLF=Lining Figures(ライニング数字)と言い、表計算や統計など数字が重要な場面で使われます。
またSC=Smallcaps(スモールキャップ)は、小文字と同じ高さでデザインされた大文字です。ソフト側でワンボタンでできるスモールキャップは無理矢理調整された美しくないものなので、フォントデータにスモールキャップがあるのであれば使用は避けるようにしましょう。
最後にAlt=Alternates(オルタネイト文字)は、異なるデザインの同じ文字(=異体字)のことで、好みに応じてデザインを使い分けることができます。
これらは、最近だとOpenTypeフォント機能として統合されていることが多いのですが、敢えて分けられているフォントも多く見られます。
Proxima NovaのようにScとOsFはセットになっていることも多い
Proxima NovaとBourgeoisのAlt(オルタネイト文字)比較。aとgのデザインが異なる。
フォントサイズによって使い分ける Caption / Text / Subhead / Display / Titling
Adobe製品のユーザー登録特典だったこともあるAdobe Garamond Premier Proには、Caption / Text / Subhead / Display の4種類が用意されています。これはなぜでしょうか?
Adobeのサイト(Optical Size)によると、それぞれCaptionは図版等のキャプション用 (6pt–8pt用)、Textは一般的な本文用 (9pt–14pt用)、Subheadは小見出し用 (14pt–24pt用)、Displayはタイトル用 (24pt以上用) として書体のデザインが調整されている旨が書かれています。
Adobe Garamond Premier Proを34ptで比較
また“数字”がフォント名に入っているものもあります。タイプディレクター小林 章さんのFF Cliffordには Six / Nine / Eighteen の3バージョンが、Gothamなどで有名なHoefler & Frere-Jones (H&FJ) のH&FJ Didotには 6 / 11 / 16 / 24 / 42 / 64 / 96 の7種類、それぞれに3ウェイト+イタリックが用意されています。
これらはそれぞれそのポイント数で使うために用意されていますが、必ずそのポイント数で使わなければいけないという約束はないので、好みに応じて使い分けを楽しむと良いでしょう。
またTitlingもDisplay同様大きいサイズで栄えるように調整されています。“Titling”とあるフォントは他にもStevens TitlingやNeutraface、Titling Gothic FB、Hoefler Titlingなど。とにかく大きく使うことで書体の良さを発揮できるフォントです。
House IndustriesのNeutraface Display Titling
…といった感じですがいかがでしたでしょうか?自分で調べてみて感じたのですが、へぇ〜知らなかった覚えておこうというよりは、フォントを使う上で非常に大事な知識だったことが分かりました。
皆さんもぜひ実践で役立ててみてください。
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