2013.6.13 Thursday - 20:23
これでもう迷わない! Std / Pro / Com / W1G / Paneuropean / Cyrillicなど欧文フォントの言語のキーワードを徹底解説
キーワード
友人から「Neue Frutigerを購入しようと考えている」との相談を受けたのですが、購入のアドバイスをしようと思ったところ、フォント名にStd / Pro / Comはどう違うのか分からなかったり、Cyrillic / Paneuropean / W1Gなど見慣れないキーワードもたくさんあったり…
さらにこれに加えセットになった無数のパック製品が存在し、MyFontsの購入オプションには181もあるなど、カオスと化していました。
えっと…一体どれを購入したらよいのでしょうか。それぞれ値段も異なっています。せっかくフォントを購入しようと思ったのに、購入直前で挫折してしまってはもったないですね。
…ということで、自分自身への再確認も含め、フォント名に付随している様々なキーワードを調べてみることにしました。
本記事は原則、HelveticaやUnivers、Frutigerなどの有名・定番書体を取り扱う、Monotype / Linotype / ITCブランドのフォントの解説となります。他のフォントブランドには当てはまらない場合がありますので、予めご了承ください。
また本記事は収録言語数を示すキーワードの解説です。Complete Family PackやFamily Pack、Value Packなどのパック製品のキーワードについては、どれを買えばお買い得? Complete Family Pack / Family Pack / Value Packなど欧文フォントパック製品のキーワードを徹底解説をご覧ください。
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Std (Basic)
Std=Standardの略。英語、フランス語、ドイツ語などの主要な21の西欧言語をサポートしたOpenTypeフォント形式。日本人の一般的な利用であればStd (Basic) を購入すれば問題ないのですが、2012年7月ごろStdの廃止が決定し、今後の新作フォントは、次に解説するProのみになっているそうです。
なぜStdが廃止されたのか?
Stdは、例えばポーランド語やチェコ語をサポートしておらず、ポーランド人のデザイナーからすれば、常に値段が高いProを購入せざるを得ませんでした。これでは不公平であり、マイナーな言語を使う国のデザイナーから批判を受けていたそうです。そういった事情もありProのみに統一されることになりました。
Pro
Pro=Professionalの略。主要西欧言語に加え、トルコ語やハンガリー語、チェコ語、スロベニア語など中央ヨーロッパの言語をサポートしたOpenTypeフォント形式。Stdより値段が高い。上の解説通り、今後Stdは廃止が決まっているので、Stdが無いフォントはProを選ぶことになります。ただし現時点でProのみのフォントはかなり少数です。
収録言語数の異なる2種類のPro
現状Proには2種類の仕様が存在しています。Proと次に解説する廃止が決まったComの両方が存在するフォントのPro(以下旧Pro)は、33以上の言語をサポートしています。一方Comの無いフォントのPro(以下新Pro)は、Comよりも多い66以上の言語をサポートしています。
Com
Com=Communicationの略。主要西欧言語に加え、さらにマイナーな言語を含む56以上の言語をサポートしたOpenTypeフォント機能搭載のTrueType形式。現在Comは廃止されており、古いバージョンの可能性があるので購入は避けたほうがよいとのこと。
TrueType形式なのでWindows用ソフトに最適ですが、そもそもプロのデザイナーであれば、TrueType形式であるComの選択肢は無いはずなので、購入候補から除外してしまってよいです。
W1G (WGL4) = Paneuropean
ギリシャ語に使われるギリシャ文字や、ロシア語などに使われるキリル文字(スラヴ系)を含む89以上の言語をサポートしたOpenTypeフォント形式。
ほぼ全てのヨーロッパ言語を意味するPaneuropeanのキーワードと同じ定義であるため、2つのキーワードが組み合わさっていることが多いようです。また、併記されていることが多いWGL4は、Windows Glyph List 4の略で、マイクロソフト社が定義した652文字の文字セットのこと。いずれにせよ日本人の一般的な利用であれば必要ないので、購入候補から除外してしまってよいです。
W2G
上記W1Gに加え、ベトナム語やヘブライ語を含む93以上の言語をサポートしたOpenTypeフォント形式。こちらも日本人の一般的な利用であれば必要ないので、購入候補から除外してしまってよいです。
Std / 旧Pro / Com / 新Pro / W1G (WGL4) / W2Gをまとめた図
この他にも
- Arabic:アラビア文字
- Devanagari:インドの代表的言語であるヒンディー語などに使われる文字
- Cyrillic (CY/Cyr):キリル文字
- Greek (GR/Grk):ギリシャ文字
- Central European (CE):中央ヨーロッパ言語
- Paneuropean (PE) = W1G:ほぼ全てのヨーロッパ言語
のキーワードが上記と組み合わさっているフォントがあります。W1GやW2G同様、日本人の一般的な利用であれば必要ないので、これらのキーワードがあるフォントは購入候補から除外してしまってよいです。
Monotype系以外のStdやProは?
Monotype / Linotype/ ITC以外のフォントブランドにもStdとProのキーワードは見られますが、区分けの基準は各ブランド統一されていません。スモールキャップや合字などのOpenTypeフォント機能の有無で区別しているブランドもあります。
StdとProの違いは「収録言語・文字数」なのか、「OpenTypeフォント機能の有無」なのか、もしくはそれ以外なのか、事前にWebサイトなどで配布されている収録グリフ表などを確認してください。
Linotypeでは対応する言語を分かりやすく切り替えることができる
MyFontsではすべての製品がズラーっと直列に並ぶため、目的のフォントを選びづらい
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以上長くなりましたが、ポイントをまとめてみました。一部例外のフォントもありますので、念のため購入前にご確認ください。
- 収録言語・文字数:Std < 旧Pro < Com < 新Pro < W1G < W2G
- 値段:Std < Pro ≒ Com < W1G < W2G
- StdとComは、廃止が決まっているので存在しないフォントがある。
- Proには、現状収録言語数の異なる2種類の仕様が存在するが、特に気にすることはない。
- StdとProの両方が存在するフォントの場合、日本人の一般的な利用であればStdで十分。Stdが無いフォントはProを選ぶ。
- Com / W1G (Paneuropean) / W2Gは、日本人の一般的な利用であれば購入候補から除外してしまってよい。
- マイナーな言語を使うことがある場合は、Pro以上のものを検討する。
Complete Family PackやFamily Pack、Value Packなどのパック製品のキーワードについては、どれを買えばお買い得? Complete Family Pack / Family Pack / Value Packなど欧文フォントパック製品のキーワードを徹底解説をご覧ください。
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