2013.4.4 Thursday - 20:27
欧文フォントを買おうとしている人へ7つのアドバイス
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「書体は見た目で選んでいい!」「書体選びはデザイナーの仕事である!」「HelveticaやDINだけじゃない!」などと言われていますが、いざデザイナーが「フォントを購入してみたい」と思っても、蓋を開けてみると面倒なことが多く、億劫になってしまいがち。
…かと言って、他のデザイナーがどのような判断で、どのようなフォントを購入したのかを知る機会はほとんどないという現状。「書体選び=デザイナーの仕事」であれば、真似されたくないという意味でも、選んだ書体はできるだけ自分だけのものにしておきたいですよね。
というわけで、普段私自身がどのような判断でフォントを購入しているのかを振り返ってまとめてみました。
念のため断っておきますが、あくまで私個人(普段様々なジャンルの仕事を請け負うWebデザイナー)の場合ですので、ここに書かれていることが皆さんにとっても当てはまるかどうかは分かりません。参考程度ということでよろしくお願いします。
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フォントを選ぶとき編
1. デザインのジャンルに固執しない汎用性のあるデザインの書体を選ぶ
初めて購入するのであれば、個性的なデザイン書体で特定の雰囲気を出す場合を除き、どんなデザインにも対応できる飽きのこない、かつ長く使える普遍的な書体を選びたいですね。汎用性のあるデザインの書体であれば、途中でデザインの方向性が変わったとしても、書体自体を変更する必要が少なくなります。
当ブログでもおすすめフォントを紹介していますし、TypecacheでまとめられているFont Clustersを眺めて、グッときたものを選んでみるのもよいでしょう。価値観は人それぞれなので「あ、私この書体のデザイン、好きかも?」という気持ちが大事です。
普遍的で汎用性のあるデザインの書体ならどんなデザインにも対応可能
Proxima Nova / Brandon Text / Museo Sans
2. ファミリーやOpenTypeフォント機能が充実しているフォントを選ぶ
複数のウェイト(太さ)があったり、‘a’や‘g’のデザインが2種類あったり、合字(リガチャ)を切り替えられたり、隠し絵文字があったり…、OpenTypeのフォント機能が充実しているフォントは使っていて楽しくなります。
プロフェッショナル用のフォントを購入する意味は、まさにここにあると言っても過言ではないでしょう。OpenTypeフォント機能は、制作ソフトの文字パネルで簡単に設定できます。
【訂正】Klavikaの‘g’が左右逆となっていました。正しくは通常が2階建ての‘g’でした。@akira1975さんご指摘ありがとうございます!
Klavikaには‘g’のデザインが2種類ある(上段)
Akko Roundedにはst合字がある(下段)
3. 書体のデザインはテクスチャで検討する
デザインが似ている書体の組み合わせにおいて、どちらにしようか判断に迷うことがあります。小泉 均氏の著書「タイポグラフィ・ハンドブック」に書かれていましたが、ある特定の文字列でどちらが良いか判断するよりも、流し込まれた文章からテクスチャとして判断すれば、デザインが似ている書体でも雰囲気の違いがよく分かります。
最近のフォントストアは、文字列だけでなく文章で比較することもできますので、様々な方向から書体のデザインを検討してみましょう。
Akzidenz GroteskとNeue Haas Groteskの比較
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フォントを買うとき編
4. どこのフォントストアで購入するか検討する
フォントストアには大きく分けて2つのタイプあります。1つは、MyFontsやFontShop、Fonts.com、YouWorkForThemなど複数のフォントブランドが集まったデパートタイプ。もう1つはFontFontやHoefler & Frere-Jonesなどフォントブランドの直営店タイプ。
前者のほうが複数のフォントブランドから探せますが、後者の人気書体Gothamを取り扱うHoefler & Co. (旧Hoefler & Frere-Jones)のように直販でしか買えないフォントブランドもあります。両者で販売されている場合、値段はどちらで買ってもほぼ同じです。
ちなみにショッピングサイトを理解できる英語力と購入者本人のクレジットカードは必須です。当ブログにはMyFontsの購入・利用方法ガイド(日本語)があるので、英語が苦手な方は是非どうぞ。
【訂正】Linotypeは直営店タイプではなく、複数のフォントブランドを取り扱うデパートタイプでした。@akira1975さんご指摘ありがとうございます!
FontShopはデパートタイプ(左)
FontFontはFontFontブランドの直営店タイプ(右)
5. ファミリーでまとめて購入する
フォントブログのあるデータによると、日本人デザイナーが欧文フォントを購入する際、BoldならBoldだけのように単体で購入する方が多いようですが、フォントはファミリーでまとめて買ったほうが断然おトクです。
細いウェイトを用いればエレガントさを、太いウェイトを用いれば力強さを、同じ書体で表現できます。今は使わなくても後から必要になることが多いですので、できるだけまとめて購入しましょう。
Process Type FoundryのColfaxでの比較
6. USドル建てかユーロ建てか…支払い通貨に注意
USドルで購入することが多いですが、直営店タイプのフォントストアだとその国のマイナーな通貨になっている場合があります。購入してから、実はUSドルじゃなかった!と泣きを見る前に、しっかりと確認をしておくとよいでしょう。
また通貨を切り替えられる場合、実際の金額を計算してみることをおすすめします。
Linotypeではショッピングカートページで通貨の切り替えが可能
7. セール情報を欠かさずチェックする
フォントストアは頻繁にセールを行なっています。MyFontsにはセール対象のフォントを集めたSpecial Offersがあるほか、LinotypeやFonts.comは有名フォントを個数・期間限定にて電撃価格でセールを行なっています。
LinotypeやFonts.comについては、最近あまりに頻度が高いので若干の倦怠感があるのも事実ですが、有名書体を取り扱うストアなので、この2つのチェックはマストです。
この他にもメールマガジンやTwitter、Facebookページなどでもセールが告知されたり、割引のクーポンコードが発行されるたりすることが多いので、気に入ったフォントストアやフォントブランドがあればチェックをしておきましょう。
またTypecacheのニュースページにはセール情報が告知されているので、まとめて見たい方は是非こちらをどうぞ。
Fonts.comのTwitterで告知された、
先着350名にITC American Typewriterのファミリーを$39で提供するセール情報
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最初からインストールされているフォントではなく、自分が選んで購入したフォントは愛着が湧きます。
欧文フォントは値段がそこまで高くないですし、誰でも気軽に買えます。是非フォントを購入してみてください。
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